同じドメインで利用しているメールアドレスのうち、一部だけをGoogle Workspaceへ移行し、残りのアカウントはXServerで継続利用したいケースがあります。
この記事では、Google Workspaceの「分割配信」を利用し、次のようなメール運用を実現するための設定手順を解説します。
| メールアドレス | 利用するメール環境 |
|---|---|
googleworkspace@example.com | Google Workspace |
xserver@example.com | XServer |
この記事内のドメイン名、メールアドレス、XServerのサーバー名はサンプルです。実際の作業時には、利用中の情報へ置き換えてください。
今回実現する分割配信の仕組み
設定後は、example.com宛てのメールを最初にGoogle Workspaceで受信します。
Google Workspaceに登録されているメールアドレスはGmailへ配信し、Google Workspaceに登録されていないメールアドレスはXServerへ転送します。

具体的には、次のように配信されます。
googleworkspace@example.com → Google WorkspaceのGmailへ配信
xserver@example.com → Google WorkspaceからXServerへ転送 → XServerのメールボックスへ配信
MXレコードだけではアカウントを振り分けられない
今回の設定で特に重要なのが、MXレコードの役割です。
MXレコードは、ドメイン宛てのメールをどのメールサーバーへ配送するかを指定するDNSレコードです。
次のように、Google WorkspaceとXServerのMXレコードを2つ登録しても、メールアドレスごとの振り分けにはなりません。
googleworkspace@example.com → Google Workspace
xserver@example.com → XServer
MXレコードの優先度は、「どのメールサーバーへ先に配送を試みるか」を表すものです。メールアドレスごとの配送先を決める設定ではありません。
そのため、今回の分割配信では、MXレコードをGoogle Workspace向けだけにして、Google Workspaceのルーティング設定でXServerへ振り分けます。
MXレコード
→ Google Workspaceのみ
Googleに存在するアカウント
→ Gmailへ配信
Googleに存在しないアカウント
→ Google WorkspaceのルーティングでXServerへ転送
設定前の注意事項
ルーティング設定が未完成の状態でMXレコードをGoogleへ切り替えると、XServerで継続利用するメールアドレスが受信できなくなる可能性があります。
作業前に、現在のDNSレコードをスクリーンショットまたはテキストで保存してください。
- 現在のMXレコード
- SPFレコード
- DKIMレコード
- DMARCレコード
- Googleのドメイン確認用TXTレコード
また、移行対象アカウントに過去のメールがある場合は、あらかじめバックアップしてください。
今回の設定例
| 項目 | 設定例 |
|---|---|
| 対象ドメイン | example.com |
| Google Workspace利用アカウント | googleworkspace@example.com |
| XServer継続利用アカウント | xserver@example.com |
| XServerのホスト名 | sv12345.xserver.jp |
| Google WorkspaceのMX | smtp.google.com |
sv12345.xserver.jpはサンプルです。XServerのサーバーパネルに表示されている実際のサーバー名を使用してください。
設定作業の全体的な流れ
- 現在のDNS設定を保存する
- Google Workspaceでドメイン所有権を確認する
- Google Workspaceに移行対象ユーザーを作成する
- 移行対象ユーザーの過去メールをバックアップする
- Google WorkspaceにXServerの配送先ホストを登録する
- Google Workspaceで分割配信ルールを作成する
- SPFレコードをGoogleとXServerの両方に対応させる
- Google WorkspaceのDKIMを設定する
- 既存のXServer向けMXレコードを削除する
- Google Workspace向けMXレコードだけを残す
- Google WorkspaceでGmailを有効化する
- 外部・内部の送受信テストを実施する
手順1:Google Workspaceでドメイン所有権を確認する
Google Workspaceの初期設定画面またはGoogle管理コンソールから、対象ドメインの所有権を確認します。
Googleから表示されたTXTレコードを、現在DNSを管理しているサービスへ追加します。
| 項目 | 設定例 |
|---|---|
| ホスト名 | 空欄または@ |
| 種別 | TXT |
| 値 | google-site-verification=xxxxxxxxxxxx |
TXTレコードを追加した後、Google Workspace側でドメインの確認を実行します。
この段階では、まだMXレコードを変更しません。
手順2:Google Workspaceにユーザーを作成する
Google管理コンソールで、次の順番に進みます。
ディレクトリ
→ ユーザー
→ 新しいユーザーを追加
Google Workspaceで使用する次のユーザーを作成します。
googleworkspace@example.com
XServerで利用するアドレスはGoogle側に作成しない
XServerで継続利用する次のメールアドレスは、Google Workspace側に作成しません。
xserver@example.com
以下のいずれとしても登録しないようにします。
- Google Workspaceのユーザー
- ユーザーエイリアス
- Googleグループ
Google Workspace側に登録すると、Google側の有効な宛先として認識され、XServerへの転送対象にならない可能性があります。
手順3:移行対象アカウントのメールをバックアップする
XServer側でgoogleworkspace@example.comを利用している場合、過去のメールはMXレコードを変更しても自動ではGoogle Workspaceへ移りません。
次のいずれかの方法で、過去メールをバックアップまたは移行します。
- OutlookやThunderbirdへIMAP接続して保存する
- Google Workspaceのデータ移行機能を利用する
- メールソフト上でXServerからGoogle Workspaceへコピーする
- 必要なメールをローカルフォルダーへ保存する
手順4:Google WorkspaceにXServerのホストを登録する
Google WorkspaceからXServerへメールを転送するため、XServerを配送先ホストとして登録します。
Google管理コンソールで、次の順番に進みます。
アプリ
→ Google Workspace → Gmail → ホスト

「ルートを追加」を選択し、次の内容を設定します。
| 項目 | 設定内容 |
|---|---|
| 名前 | XServerメールサーバー |
| ホスト名 | sv12345.xserver.jp |
| ポート | 25 |
| 接続方式 | 単一ホスト |
| MXルックアップ | 使用しない |
| TLSを必須にする | 初回テスト時は無効 |
| CA署名証明書を要求 | 初回テスト時は無効 |
| 証明書のホスト名を検証 | 初回テスト時は無効 |
設定すると以下のようになります。


配送先ホストには、次のような独自ドメインを指定しないでください。
example.com
mail.example.com
独自ドメインのMXレコードは、後ほどGoogle Workspaceを参照するようになります。そのため、Google Workspaceから送信したメールが再度Google Workspaceへ戻り、配送ループが発生する可能性があります。
XServerのサーバーパネルで確認できる実サーバー名を指定します。
sv12345.xserver.jp
手順5:Google Workspaceでデフォルトルーティングを設定する
Google Workspaceに登録されていないメールアドレスをXServerへ転送するため、Gmailの「デフォルトルーティング」を設定します。
Google管理コンソールで、次の順番に進みます。
アプリ → Google Workspace → Gmail → デフォルトルーティング

「設定」または「別のルールを追加」を選択します。
1.照合するエンベロープ受信者を設定する
「照合するエンベロープ受信者の指定」は、次のように設定します。
すべての受信者
後ほど「認識されていないアドレスに対してのみ、この操作を実施する」を選択するため、Google Workspaceに存在するユーザーまでXServerへ転送されることはありません。

2.メールの処理方法を設定する
「エンベロープ受信者が上の指定と一致する場合に実施する操作」で、次のように設定します。
メッセージを変更 → ルートを変更 → XServerメールサーバー
配送先として、あらかじめ「ホスト」で登録しておいたXServerのメールサーバーを選択します。

3.認識されていないアドレスだけを対象にする
設定画面下部の「オプション」で、次の項目を選択します。
● 認識されていないアドレスに対してのみこの操作を実施する
下の項目を選択すると、Google Workspaceに登録されているユーザーまでXServerへルート変更されるため、今回の分割配信には適していません。

正しく設定すると、次のように判定されます。
googleworkspace@example.com
→ Google Workspaceに登録されている → Gmailへ配信
xserver@example.com
→ Google Workspaceに登録されていない → XServerへルート変更
4.その他の設定は変更しない
今回の分割配信では、原則として次の項目は未チェックのままにします。
- 受信者を追加
- エンベロープ受信者を変更する
- 件名へカスタムテキストを追加する
- 添付ファイルを削除する
- カスタムヘッダーを追加する
- 迷惑メールフィルタを適用しない
今回はメールアドレスを書き換えたり、別の受信者へコピーを追加したりするのではなく、元の宛先を維持したまま配送先サーバーだけを変更します。

設定したら反映に30分ぐらい時間がかかるので間を空けてください!
手順6:SPFレコードをGoogleとXServerの両方に対応させる
分割配信中は、同じドメインからGoogle WorkspaceとXServerの両方を使ってメールを送信します。
そのため、SPFレコードでは両方の送信元を許可する必要があります。
XServerをDNS管理にも利用している場合は、サーバーパネルから次の順番に進みます。
メール → SPF設定 → 対象ドメイン → Gmail許可を有効化
設定後、「標準設定+Gmail許可」と表示されていることを確認します。SPFの一例は次のとおりです。
v=spf1 +a:sv12345.xserver.jp +a:example.com +mx include:spf.sender.xserver.jp include:_spf.google.com ~all
実際のSPFレコードは、契約中のXServerに表示される値を使用してください。
SPFレコードは、原則として1つのTXTレコードにまとめます。
次のように、Google用とXServer用を別々に登録しないでください。
v=spf1 include:_spf.google.com ~all
v=spf1 include:spf.sender.xserver.jp ~all
手順7:Google WorkspaceのDKIMを設定する
Google管理コンソールで、次の順番に進みます。
アプリ → Google Workspace → Gmail → メールの認証
対象ドメインを選び、DKIMレコードを生成します。
| 項目 | 設定例 |
|---|---|
| DKIMキーのビット長 | 2048ビット |
| セレクタ | google |
Googleから表示されたTXTレコードをDNSへ追加します。
| 項目 | 設定例 |
|---|---|
| ホスト名 | google._domainkey |
| 種別 | TXT |
| 値 | v=DKIM1; k=rsa; p=xxxxxxxxxxxx |
DNSへの反映後、Google管理コンソールへ戻り、「認証を開始」を実行します。
XServer側のDKIMレコードがすでに登録されている場合は、削除せず残します。
手順8:既存のXServer向けMXレコードを削除する
ここが今回の設定で最も重要な作業です。
Google Workspace用のMXレコードを追加しただけでは、分割配信の設定は完了しません。
既存のXServer向けMXレコードが残っている場合は、Google Workspace側のルーティング設定が完成したことを確認してから削除します。
変更前のMXレコード例
| 配送先 | 優先度 | 対応 |
|---|---|---|
smtp.google.com | 1 | 残す |
example.comまたはXServerのメールサーバー | 10 | 削除する |
削除するレコード
種類:MX
配送先:XServer向けの既存メールサーバー
優先度:10など
残すレコード
種類:MX
配送先:smtp.google.com
優先度:1
削除後の正しい状態
| 種類 | ホスト名 | 配送先 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| MX | example.comまたは空欄 | smtp.google.com | 1 |
XServer向けMXレコードを削除しても、XServerで利用するメールアドレスが直ちに使えなくなるわけではありません。
削除後は、外部からのメールが次の経路でXServerへ届きます。
外部メール → Google Workspace → Googleに存在しない宛先と判定
→ Google Workspaceの分割配信ルール → XServer → xserver@example.com
つまり、XServerを直接の受信入口として使うのではなく、Google Workspaceを経由してXServerへ配送します。
手順9:Google WorkspaceでGmailを有効化する
Google管理コンソールの「Gmailを有効にする」画面を開きます。
次の選択肢では、「MXレコードを設定」を選択します。
● MXレコードを設定
次の項目は、今回の構成では選択しません。
○ MXレコードの設定をスキップ
「次へ」を押し、GoogleによるMXレコードの確認を実行します。
MXレコードを確認できない場合
Google Workspaceで「現在確認できません」と表示される場合は、次の項目を確認します。
- 既存のXServer向けMXレコードが削除されているか
smtp.google.comだけが残っているか- 優先度が正しいか
- Google管理コンソールに表示されたMX値と一致しているか
- 実際に利用しているネームサーバー側でDNSを変更したか
- ホスト名の入力方法に誤りがないか
- DNSのTTLが経過しているか
Google管理コンソールに複数のMXレコードが表示される場合は、管理コンソールに表示された値を優先してください。
手順10:外部からの受信テスト
Google Workspaceへの受信テスト
個人のGmailなど、別ドメインのメールアドレスから送信します。
外部メール
→ googleworkspace@example.com
正しい結果は次のとおりです。
googleworkspace@example.comの
Google Workspace Gmailに届く
XServerへの受信テスト
外部のメールアドレスから次の宛先へ送信します。
外部メール
→ xserver@example.com
正しい配送経路は次のとおりです。
外部メール
→ Google Workspace → 分割配信ルール → XServer → xserver@example.com
手順11:外部への送信テスト
Google Workspaceから外部へ送信
googleworkspace@example.com
→ 外部のGmailなど
次の項目を確認します。
- 正常に届く
- 迷惑メールへ振り分けられていない
- 差出人が正しい
- SPFがPASSになっている
- DKIMがPASSになっている
XServerから外部へ送信
xserver@example.com
→ 外部のGmailなど
次の項目を確認します。
- 正常に届く
- 迷惑メールへ振り分けられていない
- 差出人が正しい
- SPFがPASSになっている
- XServer側のDKIMに問題がない
手順12:同一ドメイン間の送信テスト
分割配信では、同じドメイン内でGoogle WorkspaceとXServerをまたぐ送信テストが重要です。
Google WorkspaceからXServerへ送信
googleworkspace@example.com
→ xserver@example.com
正しい配送経路は次のとおりです。
Google Workspace
→ 内部送信ルーティング → XServer → xserver@example.com
届かない場合は、Google Workspaceのルーティング設定で「内部送信」が対象になっているか確認します。
XServerからGoogle Workspaceへ送信
xserver@example.com
→ googleworkspace@example.com
正しい配送経路は次のとおりです。
XServer
→ Google Workspace → googleworkspace@example.com
XServerのローカル配送に注意する
XServer側にgoogleworkspace@example.comのメールアカウントが残っていると、XServerがGoogle Workspaceへメールを送信せず、XServer内部のメールボックスへ配送する可能性があります。
その場合は、次の順番で対応します。
- XServer側の
googleworkspace@example.comの過去メールをバックアップする - XServer側の
googleworkspace@example.comを削除する xserver@example.comから再度送信する- Google Workspaceへ届くか確認する
送受信テスト一覧
| No. | 送信元 | 宛先 | 正しい配送先 |
|---|---|---|---|
| 1 | 外部メール | googleworkspace@example.com | Google Workspace |
| 2 | 外部メール | xserver@example.com | XServer |
| 3 | googleworkspace@example.com | 外部メール | 外部メールの受信箱 |
| 4 | xserver@example.com | 外部メール | 外部メールの受信箱 |
| 5 | googleworkspace@example.com | xserver@example.com | XServer |
| 6 | xserver@example.com | googleworkspace@example.com | Google Workspace |
設定完了後の状態
Google Workspace
作成するユーザー:
googleworkspace@example.com
作成しないアドレス:
xserver@example.com
XServer
残すアカウント:
xserver@example.com
バックアップ後に削除するアカウント:
googleworkspace@example.com
MXレコード
残す:
smtp.google.com
優先度1
削除する:
既存のXServer向けMXレコード
最終的なメール配送
外部メール
→ Google Workspace
→ googleworkspace@example.comならGmail
→ xserver@example.comならXServer
問題が発生した場合の切り戻し
MXレコードをGoogle Workspaceへ変更した後、メールが正常に配送されない場合は、作業前に保存しておいたXServer向けMXレコードへ戻します。
変更前:
MX → XServer
分割配信設定後:
MX → Google Workspace
切り戻し:
MX → 変更前のXServer設定
MXレコードを元に戻した後は、外部メールからXServerのメールアドレスへ送信し、受信が復旧したことを確認します。
最終チェックリスト
Google Workspace
- □
googleworkspace@example.comを作成した - □
xserver@example.comをGoogle側に作成していない - □ XServerの実サーバー名をホストとして登録した
- □ 分割配信ルールを作成した
- □ 「受信」をルール対象にした
- □ 「内部送信」をルール対象にした
- □ 認識されないアカウントだけを対象にした
DNS・XServer
- □ SPFでGoogle WorkspaceとXServerの両方を許可した
- □ Google Workspace用のDKIMを追加した
- □ 既存のXServer向けMXレコードを削除した
- □ Google Workspace向けMXレコードだけを残した
- □ Google WorkspaceでGmailを有効化した
送受信テスト
- □ 外部から
googleworkspace@example.comへ届く - □ 外部から
xserver@example.comへ届く - □
googleworkspace@example.comから外部へ届く - □
xserver@example.comから外部へ届く - □
googleworkspace@example.comからxserver@example.comへ届く - □
xserver@example.comからgoogleworkspace@example.comへ届く
まとめ
Google WorkspaceとXServerで分割配信する場合は、Google Workspaceをすべての受信メールの入口にします。
Google Workspaceに登録されているアカウントはGmailへ配信し、Google Workspaceに存在しないアカウントはルーティング設定によってXServerへ転送します。
重要なポイントは、次の4点です。
- Google Workspaceには移行対象ユーザーだけを作成する
- XServerをGoogle Workspaceの配送先ホストとして登録する
- Google Workspaceに存在しない宛先だけをXServerへ転送する
- 既存のXServer向けMXレコードを削除し、Google向けMXだけを残す
特に、既存のXServer向けMXレコードを残したままにすると、Google WorkspaceでGmailを有効化できなかったり、意図しないメール配送が発生したりする可能性があります。
MXレコードを削除する前にGoogle Workspace側のルーティングを完成させ、変更後は外部・内部の両方向で送受信テストを行ってください。
